「ないです」はありません |
昨日と同じようなことなんだけど、「すごい」と並んで気になる表現がある。タイトルを見てお分かりかと思うが、「ないです」だ。これは、文法上正しい日本語とは言いがたい(※1)。正しくは、「ありません」を使うべきだ。
「です」を使うような丁寧な表現においては、否定を断定的に表現することは避けるのが、日本語が従来持っていた奥ゆかしさだ。「ない」と直接伝えるのではなく、「在る」を打ち消すことで「不在」を伝えるのだ。
文法的に誤りであることを理解いただくには、次の説明がいいかもしれない。
「です」は、断定などを示す終助詞「だ」の丁寧表現。「○○だ」を丁寧に伝えたいときに「○○です」と使う。逆に言うなら、「○○です」は、丁寧ではない状態「○○だ」に言い換えることが可能だ。
正しい例)
(常体)これはペンだ。→(敬体)これはペンです。
(敬体)今日はいい天気です。→(常体)今日はいい天気だ。この法則を「ないです」を含む文に適用すると、次のようになる。
ないですの例)
(敬体)ここにペンはないです。→(常体)ここにペンはないだ。明らかにおかしいでしょう。
※方言でこのように言うという方もいらっしゃるかもしれませんが、言文一致の問題に戻るのでスルーします。
では、なぜ「ないです」はここまで市民権を得たのか。その背景には、日本人の気性の変化があるのだと私は思う。私を含め、最近の日本人に奥ゆかしさがなくなり、否定を婉曲的に伝える必要性を感じないのだろう。これにおいても、口語ならいいかなと私も思う。相手に対して断定的に否定を伝えても、前後の会話や表情などから悪意のないことを感じ取れるからだ。しかし、文字だけでの一方的なコミュニケーションでは、やはり婉曲表現は有能な道具になり得る。みなさんも、次のふたつを見比べてみれば、理屈ではなく感覚的に理解していただけると思う。
質問に対して否定を伝える2例・その1)
Q.その他、ご要望があればご記入ください。
A.特にないです。
質問に対して否定を伝える2例・その2)
Q.その他、ご要望があればご記入ください。
A.特にありません。
おそらく、後者の方が品良く感じる方が多いだろう。せっかく丁寧な言葉遣いを心がけて「〜です、〜ます」を使うなら、もう1歩品良く見える文章にしておいた方がお得(笑)だと思うが、いかがだろうか?
※1:すでにかなり市民権を得ているので、正しい表現と認められるのは遠くないだろう。
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 「ないです」はありません
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://riskey.bigbean.net/mt5/mt-tb.cgi/1256